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風吹けば波打つ岸の松なれや
ねにあらはれて泣きぬべらなり

歌の意味
風が吹くと波が打ち寄せる岸の松だからだろうか、根が波に洗われて現れるように、声を上げて泣いてしまいそうだ。
鑑賞
巻第十三 恋歌三 671

詞書「題しらず」
 風が吹くと波が打ち寄せる岸の松の根が現れるように、こらえきれずに声を上げて泣いてしまいそうだと詠む歌である。「ね」に松の根と泣く音を掛け、波に洗われて根が露わになる松に、恋が表に出てしまう自分を重ねている。
 作者は「よみ人しらず」とあり、名は伝わっていない。左注に「このうたは、ある人のいはく、柿本人麿がなり」とあり、柿本人麻呂の作とする説がある。

 初句「風吹けば」は、風が吹くと、の意で、確定条件を示す。
 二句「波打つ岸の」は、波が打ち寄せる岸の、の意である。
 三句「松なれや」は、松だからだろうか、の意で、係助詞「や」が疑問を示す。三句切れである。
 四句「ねにあらはれて」は、根と音を掛けた掛詞で、松の根が現れることと、泣き声となって恋が表れることを重ねる。
 結句「泣きぬべらなり」は、泣いてしまいそうだ、の意で、完了「ぬ」と推量の「べらなり」で結ぶ。

ね:松の根の意と、泣く声の意の音を掛ける
べらなり:〜のようだ、〜しそうだ
作者
よみ人しらず
出典
古今和歌集
前の歌
枕より又知る人もなき恋を 涙せきあへずもらしつるかな
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池に住む名ををし鳥の水を浅み 隠るとすれどあらはれにけり