枕より又知る人もなき恋を
涙せきあへずもらしつるかな
- 歌の意味
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枕のほかには知る人もない恋であったのに、涙をこらえきれずに流して、人に漏らしてしまったことだ。
- 鑑賞
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巻第十三 恋歌三 670
詞書「題しらず」
枕のほかには誰も知らない秘めた恋だったのに、こらえきれない涙で人に知られてしまったと詠む歌である。恋の秘密を知るものとされた枕を持ち出し、涙が漏れることと秘密が漏れることを重ねている。
作者の「平貞文」は平好風の子で、桓武平氏の出身である。平中の名で知られる色好みで、『平中物語』の主人公とされる。中古三十六歌仙の一人である。
巻末の第六百七十六首の伊勢の歌も、枕が恋を知るという発想を用い、枕さえせずに寝たのにと詠んでおり、本歌と呼応している。
初句「枕より」は、枕以外に、の意で、格助詞「より」が限定を示す。
二句「又知る人も」は、ほかに知る人も、の意である。
三句「なき恋を」は、ない恋であるのに、の意で、逆接の気持ちで下に続く。
四句「涙せきあへず」は、涙をせき止めきれずに、の意で、八音の字余りである。
結句「もらしつるかな」は、涙を漏らすことと、秘密を漏らすことを重ね、完了「つ」と詠嘆の「かな」で結ぶ。「涙」「せく」「漏らす」は縁語である。
せきあふ:せき止めきれる、こらえきれる
- 作者
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平貞文
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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おほかたは我が名もみなと漕ぎ出でなむ 世をうみべたにみるめ少なし
- 次の歌
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風吹けば波打つ岸の松なれや ねにあらはれて泣きぬべらなり