山彦も答へぬ山の呼子鳥
我ひとりのみなきやわたらむ
- 歌の意味
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こだまさえも答えない山の呼子鳥のように、私はただひとりで泣き続けるのだろうか。
- 鑑賞
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巻第十一 恋歌一 643
詞書「女のもとに、男の文つかはしけるに、返り事もせず侍りければ」
こだまさえ答えない山で鳴く呼子鳥のように、自分ひとりで泣き続けるのだろうかと詠む歌である。詞書から、男が女のもとに手紙を贈ったが返事もなかったので詠んだ歌とわかる。呼びかけても返事のない女を答えのない山にたとえ、呼び続ける呼子鳥に自分を重ねている。第六百三十一首の浜千鳥と同じく鳥に託して「なきやわたらむ」と結び、次歌の第六百四十四首とともに山彦を詠む歌が二首並ぶ。
初句「山彦も」は、こだまも、の意で、次歌の第六百四十四首の初句「山彦は」と同じ語である。
二句「答へぬ山の」は、答えない山の、の意で、返事をしない女を暗示している。
三句「呼子鳥」は、人を呼ぶように鳴く鳥の意で、呼びかけ続ける自分を重ねている。
四句「我ひとりのみ」は、私ひとりだけ、の意である。
結句「なきやわたらむ」は、「なき」が鳥の「鳴き」と自分の「泣き」を掛ける掛詞である。係助詞「や」は疑問を表し、「む」の連体形で結ぶ係り結びである。第六百三十一首の結句「恋ひやわたらむ」と同じ形である。
やまびこ:山彦。こだま
よぶこどり:呼子鳥。人を呼ぶように鳴く鳥。かっこうの類とされる
なく:鳥が「鳴く」意と、自分が「泣く」意を掛ける
かへりごと:返り事。返事
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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いかにせむ命は限りあるものを 恋は忘れず人はつれなし
- 次の歌
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山彦は君にも似たる心かな 我が声せねばおとづれもせず