木の芽はる春の山田をうち返し
思ひ止みにし人ぞ恋しき
- 歌の意味
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木の芽がふくらむ春の山田を鋤き返すように、繰り返し、思いあきらめたはずの人が恋しい。
- 鑑賞
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巻第九 恋歌一 544
詞書「女に年を経て心ざしあるよしをのたうびわたりけり、女なほ今年をだに待ち暮らせと頼めけるを、その年も暮れて明くる春までいとつれなく侍りければ」
木の芽のふくらむ春の山田を鋤き返すように、思いあきらめたはずの人が、また繰り返し恋しくなる、と詠んだ歌である。春の田の耕しに託して、断ちきれない恋しさを表している。
詞書によれば、長年思いを寄せていると女に言い続けたが、女は今年だけでも待ち暮らせと期待を持たせておきながら、その年も暮れて翌年の春までひどく冷淡だったので詠んだ歌である。本巻の第五百十二首も「うち返し」を田を鋤き返す意と重ねて詠んでいる。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。原文の作者表記は「よみ人も」とあるが、ここでは「よみ人しらず」として扱う。
初句「木の芽はる」の「はる」は、木の芽が「張る」と、二句の「春」を掛けた掛詞である。
二句「春の山田を」は、春の山の田を、の意で、初句から二句までが三句の「うち返し」を導く序詞となっている。
三句「うち返し」は、田を鋤き返す意と、繰り返し、の意を重ねている。本巻の第五百十二首の初句と同じ語である。
四句「思ひ止みにし」は、思いあきらめてしまった、の意である。
結句「人ぞ恋しき」は、人が恋しい、の意で、係助詞「ぞ」と連体形「恋しき」が係り結びをなしている。
はる:木の芽が「張る」意と「春」を掛ける
やまだ:山あいの田
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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月日をも数へけるかな君恋ふる 数をも知らぬ我が身何なり
- 次の歌
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ころを経て逢ひ見ぬ時は白玉の 涙も春は色まさりけり