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ころを経て逢ひ見ぬ時は白玉の
涙も春は色まさりけり

歌の意味
長いあいだ逢わずにいる時は、白玉のような涙も、春には色がまさって紅に染まることだ。
鑑賞
巻第九 恋歌一 545

詞書「心ざしありながらえ逢はず侍りける女のもとにつかはしける」
 長いあいだ逢えないでいると、白玉のような涙も春には色が濃くなる、と詠んだ歌である。春に草木の色がまさるのに重ねて、逢えない嘆きの涙が紅の涙に変わるほどの思いを表している。
 詞書によれば、思いを寄せながら逢うことのできない女に送った歌である。次歌は伊勢の返歌で、二首は贈答の一組となっている。
 作者の「贈太政大臣」は藤原時平である。藤原基経の子で、左大臣に至り、菅原道真を大宰府に左遷したことで知られる。没後に太政大臣を贈られたため、贈太政大臣と呼ばれる。

 初句「ころを経て」は、長い時を経て、の意である。
 二句「逢ひ見ぬ時は」は、逢わずにいる時は、の意である。
 三句「白玉の」は、白い玉、真珠の、の意で、涙をたとえている。
 四句「涙も春は」は、涙も春には、の意で、春に草木の色が深まることを重ねている。次歌の初句と二句「人恋ふる涙は春ぞ」がこれを受けている。
 結句「色まさりけり」は、色が濃くなることだ、の意で、悲しみのあまり紅の涙になることをいっている。

しらたま:白い玉、真珠
作者
藤原時平
出典
後撰和歌集
前の歌
木の芽はる春の山田をうち返し 思ひ止みにし人ぞ恋しき
次の歌
人恋ふる涙は春ぞぬるみける 絶えぬおもひのわかすなるべし