深き思ひそめつと言ひし言の葉は
いつかあき風吹きて散りぬる
- 歌の意味
-
深い思いで心を染めた、思い初めたと言ったあなたの言葉は、いつの間に秋風、飽きの風が吹いて散ってしまったのだろう。
- 鑑賞
-
巻第十八 雑歌四 1273
詞書「題しらず」
深く思い初めたと言った言葉は、いつ秋風が吹いて散ったのか、と詠んだ歌である。言葉を木の葉に見立て、「秋」に「飽き」を掛けて、相手の心変わりを恨んでいる。次歌に伊勢の返しがあることから、伊勢に贈った歌とみられる。
作者の「贈太政大臣」は藤原時平である。関白藤原基経の長男で、左大臣に至り、菅原道真を大宰府へ左遷させたことで知られる。没後に太政大臣を贈られた。
初句「深き思ひ」は、深い思いを、の意で、字余りとなっている。「思ひ」の「ひ」に色の「緋」を響かせ、二句の「染め」と縁をなしている。
二句「そめつと言ひし」の「そめ」は、「染め」と「初め」を掛けた掛詞で、心を深く染めた意と、思い初めた意を重ねている。
三句「言の葉は」は、言葉は、の意で、言葉を木の葉に見立てている。前歌の詞書の古歌の句「言ひし言の葉」と同じ言葉である。
四句「いつかあき風」の「あき」は、「秋」と「飽き」を掛けた掛詞で、「か」は疑問の係助詞である。
結句「吹きて散りぬる」は、吹いて散ってしまったのか、の意で、四句の「か」を受けて連体形「ぬる」で結ぶ係り結びとなっている。「葉」「散る」は縁語である。
そむ:「染む」の意と、「初む」を掛ける
あきかぜ:「秋風」の意と、「飽き」を掛ける
ことのは:言葉、木の葉に見立てる
- 作者
-
藤原時平
- 出典
-
後撰和歌集
- 前の歌
-
移ろはぬ名に流れたる川竹の いづれの世にかあきを知るべき
- 次の歌
-
心なき身は草木にもあらなくに あき来る風に疑はるらむ