我が背子がありかも知らで寝たる夜は
暁方の枕さびしも
- 歌の意味
-
夫がどこにいるのかも知らないで寝た夜は、明け方の枕がさびしいことよ。
- 鑑賞
-
巻第十三 恋歌三 803
詞書は前の歌に続き「題しらず」
夫の居場所も知らずに独りで寝た夜は、明け方の枕がさびしいと詠む歌である。どこにいるかもわからない夫を思いながら独り寝をし、目覚めた明け方の寂しさをしみじみと詠んでいる。
初句「我が背子が」は、私の夫が、の意で、「背子」は女性が夫や恋人を親しんで呼ぶ語である。前歌の第八百二首が男の側から「妹」を思うのに対し、この歌は女の側から「背子」を思い、対をなしている。
二句「ありかも知らで」は、居場所も知らないで、の意で、「で」は打消の接続助詞である。
三句「寝たる夜は」は、寝た夜は、の意である。
四句「暁方の」は、夜明け前の、の意である。
結句「枕さびしも」は、枕がさびしいことよ、の意で、「も」は詠嘆を表す。前歌の「我がなき床」と、独り寝の寝床を共有している。
せこ:背子。女性から夫や恋人を親しんで呼ぶ語
ありか:在り処。居場所
あかつきがた:暁方。夜明け前のまだ暗いころ
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
拾遺和歌集
- 前の歌
-
むばたまの妹が黒髪今宵もや 我がなき床になびき出でぬらん
- 次の歌
-
いかなりし時くれ竹のひとよだに いたづらぶしを苦しと言ふらん