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散りぬべき花の限りはおしなべて
いづれともなく惜しき春かな

歌の意味
やがて散ってしまうはずの花は、ある限りすべて、どれと区別することもなく惜しまれる、そのような春であることだ。
鑑賞
巻第三 春歌下 84

詞書「題しらず」
 いずれ散ってしまう花は、どれと区別することなくすべてが惜しく、そうした花の咲く春そのものが惜しいと詠んだ歌である。特定の花ではなく、春の花すべてへと惜しむ心を広げている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。原文の作者表記は「よみ人も」とあるが、ここでは「よみ人しらず」として扱う。

 初句「散りぬべき」の「ぬべし」は、きっと〜してしまうだろう、の意で、いずれ必ず散る花であることを示す。
 二句「花の限りは」の「限り」は、ある限りすべて、の意で、散るはずの花はすべて、の意を表す。
 三句「おしなべて」は、すべて一様に、の意である。
 四句「いづれともなく」は、どれと区別することもなく、の意である。
 結句「惜しき春かな」の「かな」は詠嘆を表す。本巻の第百三十八首と巻末の第百四十六首も同じ「惜しき春かな」で結ばれ、春を惜しむ心が巻を通じて繰り返されている。

おしなぶ:すべてを一様にする
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
千世経べきかめに挿せれど桜花 とまらん事は常にやはあらぬ
次の歌
垣越しに散り来る花を見るよりは 根こめに風の吹きも越さなん