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千世経べきかめに挿せれど桜花
とまらん事は常にやはあらぬ

歌の意味
千年も生きるという亀に通う瓶に挿したけれど、桜の花が散らずにとどまるようなことなど、いつの世にもないものではないか。
鑑賞
巻第三 春歌下 83

詞書「返し」
 前歌で、瓶に挿した桜が色あせたと嘆いた紀貫之に対し、千年を経るという亀に通う瓶に挿しても、花がとどまることなどないものだと返した歌である。花の移ろいを世の常として受けとめ、相手の嘆きを和らげている。
 前歌の第八十二首と贈答をなす。
 作者の中務は、宇多天皇の皇子敦慶親王と伊勢との間に生まれた娘である。中務卿であった父にちなんでこう呼ばれた。三十六歌仙の一人である。

 初句「千世経べき」は、千年も生きるはずの、の意で、長寿の亀を導いている。前歌の「久しかれ」を受け、さらに長い歳月を示している。
 二句「かめに挿せれど」の「かめ」は、「瓶」と「亀」を掛けた掛詞で、前歌の第八十二首の四句をそのまま受けている。
 三句「桜花」は、前歌と同じく三句に置かれ、贈答の形を整えている。
 四句「とまらん事は」の「ん」は推量の助動詞「む」で、花が散らずにとどまるようなことは、の意である。
 結句「常にやはあらぬ」の「やは」は係助詞で、連体形「ぬ」と係り結びをなす。とどまることなどいつもないものではないか、と念を押し、花の移ろいは世の常だと説いている。

かめ:花を挿す「瓶」と、長寿の象徴である「亀」を掛ける
ちよ:千年、きわめて長い年月
作者
中務
出典
後撰和歌集
前の歌
久しかれあだに散るなと桜花 かめに挿せれどうつろひにけり
次の歌
散りぬべき花の限りはおしなべて いづれともなく惜しき春かな