垣越しに散り来る花を見るよりは
根こめに風の吹きも越さなん
- 歌の意味
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垣根越しに散ってくる花を見ているよりは、いっそ根ごと、風が吹いてこちらへ越してくれればよいのに。
- 鑑賞
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巻第三 春歌下 85
詞書「朝忠朝臣隣に侍りけるに、桜のいたう散りければ言ひつかはしける」
隣家の桜が垣根越しに散ってくるのを見て、花びらだけでなく木ごと風が吹き越してくれればよいと戯れた歌である。隣の花をうらやむ気持ちを大胆な誇張で表し、隣人への親しみも込めている。
詞書によれば、藤原朝忠が隣に住んでいたとき、その家の桜がひどく散ったので言い送ったものである。朝忠は藤原定方の子で、のちに中納言に至った歌人である。
作者の伊勢は伊勢守藤原継蔭の娘で、宇多天皇の中宮温子に仕えた。宇多天皇の寵愛を受け、のちに敦慶親王との間に中務をもうけた。三十六歌仙の一人である。
初句「垣越しに」は、隣家との境の垣根を越して、の意である。
二句「散り来る花を」は、隣の桜の花びらがこちらへ散ってくるさまを示す。
三句「見るよりは」は、見ているよりは、の意で、下の句の願いへとつないでいる。
四句「根こめに風の」の「根こめ」は根ごと、の意で、花びらばかりでなく木そのものを、という大胆な誇張である。本巻ではこのあとも、第八十八首、第九十一首など、風と花を取り合わせた歌が続いていく。
結句「吹きも越さなん」の「なん」は他に対する願望で、風が吹き越してくれればよいのに、の意である。
ねこめ:根ごと、根こそぎ
- 作者
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伊勢
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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散りぬべき花の限りはおしなべて いづれともなく惜しき春かな
- 次の歌
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春の日の長き思ひは忘れじを 人の心にあきや立つらむ