千年ともなにか祈らんうらに住む
鶴の上をぞ見るべかりける
- 歌の意味
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千年もと、どうしてあらためて祈ることがあろうか。鏡の裏に住む鶴の身の上を見ればよかったのだ。
- 鑑賞
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巻第五 賀歌 298
詞書「鏡鋳させ侍りける裏に、鶴の形を鋳つけさせ侍りて」
鏡を鋳造させ、その裏に鶴の模様を鋳つけさせた折に、千年の長寿をあらためて祈る必要はなく、鏡の裏に住む鶴を見ればよいと詠む歌である。浦に住む鶴を鏡の裏の鶴に重ね、鏡を見るたびに千年の齢が約束されているという祝意を込めている。詞書によれば、鏡を鋳造させた時、その裏に鶴の形を鋳つけさせて添えた歌である。
作者の「伊勢」は、平安時代前期から中期の女流歌人で、藤原継蔭の娘である。宇多天皇の中宮温子に仕え、中務の母となった。三十六歌仙に数えられる。
初句「千年とも」は、千年もと、の意である。本巻の第二百七十首の初句も同じ「千年とも」で、千年という数を祈ることを退ける趣向を共有している。
二句「なにか祈らん」は、どうして祈ろうか、の意で、「か」は反語の係助詞であり、連体形「ん」で結ぶ。ここで句切れとなる。
三句「うらに住む」は、鏡の「裏」と、鶴の住む海辺の「浦」とを掛けている。
四句「鶴の上をぞ」は、鶴の身の上を、の意で、千年を生きる鶴の齢をいう。本巻の第二百六十五首、第二百八十四首に続く鶴の歌である。
結句「見るべかりける」は、見るべきであったのだ、の意で、係助詞「ぞ」を受けて連体形「ける」で結ぶ。「見る」は鏡の縁語である。
うら:鏡の裏の意と、海辺の浦の意とを掛ける
いる:金属を溶かして型に流し込み、器物を作る。鋳る
- 作者
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伊勢
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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生ひ初むるねよりぞしるき笛竹の すゑのよ長くならんものとは
- 次の歌
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君が世は天の羽衣まれにきて 撫づとも尽きぬ巌ならなん