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君が世は天の羽衣まれにきて
撫づとも尽きぬ巌ならなん

歌の意味
あなたの寿命は、天人がまれに天の羽衣を着て降りて来て撫でても、すり減って尽きることのない巌であってほしい。
鑑賞
巻第五 賀歌 299

詞書「題しらず」
 天人がまれに降りて来て羽衣で撫でても尽きることのない巌のように、君の寿命が限りなく続いてほしいと願う歌である。想像を絶する長さの時間の喩えを用いて、限りない長寿を祝っている。
 仏典には、天人がまれに降りて来て大きな巌を羽衣で撫で、その巌がすり減って尽きるまでの長い時間を一劫とする喩えが説かれており、この歌はそれを踏まえている。

 初句「君が世は」は、あなたの寿命は、の意である。本巻の第二百七十七首の初句「君が世を」と同じく、君の齢を巌にたとえている。
 二句「天の羽衣」は、天人が着て空を飛ぶという衣をいう。
 三句「まれにきて」は、「来て」と、羽衣を「着て」とを掛けている。
 四句「撫づとも尽きぬ」は、撫でても尽きることのない、の意で、「とも」は逆接の仮定を表す。
 結句「巌ならなん」は、巌であってほしい、の意で、「なん」は他にあつらえ望む終助詞である。次歌の第三百首も同じ喩えを用い、巌の歌で巻を閉じている。

く:来る意と、衣を着る意の着るとを掛ける
あまのはごろも:天人が着て空を飛ぶという衣
なづ:撫でる
いはほ:大きな岩
作者
よみ人しらず
出典
拾遺和歌集
前の歌
千年ともなにか祈らんうらに住む 鶴の上をぞ見るべかりける
次の歌
動きなき巌の果ても君ぞ見ん 乙女の袖の撫で尽くすまで