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夢とても人に語るな知るといへば
手枕ならぬ枕だにせず

歌の意味
夢の中のことだとしても、人に語ってはいけない。枕は秘密を知るというから、手枕のほかの枕さえしないでいるのだから。
鑑賞
巻第十三 恋歌三 1159

詞書「忍びたる人と二人臥して」
 逢瀬を夢にたとえて詠む一連の一首目である。二人の逢瀬は夢のことだとしても人に語るな、枕は知るというので手枕のほかの枕さえしないのだから、と詠む。詞書によれば、人目を忍ぶ恋人と共寝をしているときの歌である。
 作者の「伊勢」は、伊勢守藤原継蔭の娘で、宇多天皇の中宮温子に仕えた女房である。三十六歌仙の一人に数えられる。

 初句「夢とても」は、夢のことであっても、の意である。前歌で見ることのできなかった夢を受け、今の逢瀬そのものを夢にたとえて、たとえ夢であっても、と前置きする。
 二句「人に語るな」は、人に語ってはならない、の意で、「な」は禁止の終助詞である。二句切れとなり、相手への強い口止めが示される。次歌の「君語るなよ」、本巻の第千百六十一首の「人に語るな」も同じ口止めの句を用い、三首が一続きに配されている。
 三句「知るといへば」は、知るというので、の意である。枕は恋の秘密を知るものとされ、そのことを踏まえている。
 四句「手枕ならぬ」は、手枕ではない、の意である。手枕は腕を枕とすることで、ここでは共寝の相手の腕を指す。
 結句「枕だにせず」は、枕さえしない、の意である。秘密を知る枕さえ遠ざけて腕だけを枕にしているのだから、あなたが語らなければ誰にも知られない、という理屈で口止めを強めている。

ふす:横になる。共寝をする
たまくら:腕を枕とすること
作者
伊勢
出典
新古今和歌集
前の歌
なかなかの物思ひ初めて寝ぬる夜は はかなき夢もえやは見えける
次の歌
枕だに知らねば言はじ見しままに 君語るなよ春の夜の夢