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なかなかの物思ひ初めて寝ぬる夜は
はかなき夢もえやは見えける

歌の意味
なまじ逢ったためにかえって物思いをし始めて寝る夜は、はかない夢さえ見ることができただろうか、いや見られはしなかった。
鑑賞
巻第十三 恋歌三 1158

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 逢ったのちの嘆きを詠む一連の三首目である。なまじ逢ったためにかえって物思いをし始めて寝る夜は、はかない夢さえ見ることができないと詠む。詞書は前の歌に続いて題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
 作者の「実方朝臣」は藤原実方である。左大臣藤原師尹の孫で、侍従藤原定時の子である。左近衛中将から陸奥守となり、任地で没した。中古三十六歌仙の一人である。

 初句「なかなかの」は、なまじっかの、かえって、の意である。逢ったことがかえって物思いの種になったことを示す。
 二句「物思ひ初めて」は、物思いをし始めて、の意である。前歌の「逢ひ見ても甲斐なかりけり」を受け、逢瀬ののちにかえって深まる恋の苦しみへと進む。
 三句「寝ぬる夜は」は、寝る夜は、の意で、係助詞「は」で夜を取り立てる。
 四句「はかなき夢も」は、前歌の四句「はかなき夢に」と同じ語を用いる。前歌では現実が夢に劣るとされたが、本歌ではその夢さえ見られない。二首が同じ語でつながりつつ、嘆きを一段深めている。
 結句「えやは見えける」は、見ることができただろうか、いや見られなかった、の意である。「え」は下に打消や反語を伴って不可能を表し、「やは」は反語である。物思いのために眠れず、夢の逢瀬さえかなわない苦しみで結ばれる。

ものおもひ:恋のために思い悩むこと
ぬ:寝る。眠る
作者
藤原実方
出典
新古今和歌集
前の歌
逢ひ見ても甲斐なかりけりうばたまの はかなき夢に劣るうつつは
次の歌
夢とても人に語るな知るといへば 手枕ならぬ枕だにせず