亡き人もあるがつらきを思ふにも
色分かれぬは涙なりけり
- 歌の意味
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亡くなった親のことも、生きている人がつれないことも思うにつけ、どちらのためとも色の区別がつかないのは、流れる涙であったよ。
- 鑑賞
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巻第二十 哀傷 1301
詞書「親に後れて侍りけるころ、男の訪ひ侍らざりければ」
亡き人のことも、生きている人のつれなさも思うにつけ、どちらの涙とも色の区別がつかないと詠む歌である。詞書から、親に先立たれた頃、恋人の男が見舞いにも来なかったので詠んだ歌とわかる。親を失った悲しみの涙と、訪れない男を恨む涙とが一つになって流れるさまを、涙の色が分かれないと言いなし、重なる悲しみを伝えている。
作者の伊勢は、伊勢守藤原継蔭の娘で、宇多天皇の中宮温子に仕え、宇多天皇の寵を受けて皇子を産んだ。三十六歌仙に数えられ、百人一首の「難波潟」の歌で知られる。
初句「亡き人も」は、亡くなった人のことも、の意で、詞書の親をいう。
二句「あるがつらきを」は、生きている人がつれないことを、の意で、訪れない男をいう。初句の「亡き」と「ある」とを対比している。
三句「思ふにも」は、思うにつけても、の意である。
四句「色分かれぬは」は、色の区別がつかないのは、の意で、悲しみの涙と恨みの涙とが見分けられないことをいう。
結句「涙なりけり」は、涙であったのだ、の意で、「けり」は気づきの詠嘆を表す。本巻の第千二百九十三首の結句「涙なりけり」と、同じ句を共有している。
とふ:訪ふ。訪れる、見舞う
おくる:後る。先立たれる
- 作者
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伊勢
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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常ならぬ世は憂き身こそ悲しけれ その数にだに入らじと思へば
- 次の歌
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うつくしと思ひし妹を夢に見て 起きて探るになきぞ悲しき