年月の行くらん方もおもほえず
秋のはつかに人の見ゆれば
- 歌の意味
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年月がどこへ過ぎて行くのかもわからない。秋の頃に、ほんのわずかばかり、あの人の姿が見えるので。
- 鑑賞
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巻第十四 恋歌四 906
詞書は前の歌に続き「題しらず」
秋にほんのわずかばかりあの人の姿を見るので、年月がどこへ過ぎて行くのかもわからなくなってしまうと詠む歌である。まれにしか逢えない人を待ち続けるうちに、時の流れの感覚さえ失ってしまう心を詠んでいる。
本巻の第九百六首から第九百八首まで、伊勢の歌が三首続く。いずれも逢えない人を遠く思う心を詠んでいる。
作者の「伊勢」は、平安時代前期から中期の女流歌人で、藤原継蔭の娘である。宇多天皇の中宮温子に仕え、のちに宇多天皇の寵愛を受けた。三十六歌仙に数えられる。
初句「年月の」は、年月が、の意である。次歌の第九百七首の三句「年月を」と、年月を詠む点を共有している。
二句「行くらん方も」は、過ぎて行くであろう方向も、の意で、「らん」は現在推量の助動詞である。
三句「おもほえず」は、わからない、思われない、の意である。ここで句切れとなる。
四句「秋のはつかに」は、秋の頃、ほんのわずかに、の意で、「はつか」は、わずかに、ほのかに、の意である。
結句「人の見ゆれば」は、あの人の姿が見えるので、の意で、「ば」は順接の確定条件を表す。上の句と倒置になり、時の感覚を失う理由を示している。
はつか:僅か。ほんの少し。ちらりと
- 作者
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伊勢
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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陸奥の安達の原の白真弓 心こはくも見ゆる君かな
- 次の歌
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思ひきやあひ見ぬほどの年月を 数ふばかりにならんものとは