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恋ひ恋ひてまれに今宵ぞあふさかの
ゆふつけ鳥は鳴かずもあらなむ

歌の意味
恋しく思い続けて、ようやくまれに今夜逢うことができた。逢坂の関の木綿付鳥よ、どうか鳴かないでいてほしい。
鑑賞
巻第十三 恋歌三 634

詞書「題しらず」
 恋い焦がれてようやく今夜逢えたのだから、夜明けを告げる鶏よ、鳴かないでほしいと願う歌である。「あふさか」に逢坂の関と逢うを掛け、逢瀬の喜びと、朝が来ることへの恐れを一首に込めている。
 作者は「よみ人しらず」とあり、名は伝わっていない。
 ここから逢瀬の夜の短さを惜しむ歌が続き、後朝の別れの歌群へとつながっていく配列である。

 初句「恋ひ恋ひて」は、恋しく思い続けて、の意で、動詞を重ねて長い間の思いを表す。
 二句「まれに今宵ぞ」は、ようやくまれに今夜こそ、の意で、係助詞「ぞ」で今夜を強調し、下に「逢ふ」を掛けて続ける。
 三句「あふさかの」は、逢ふと逢坂を掛けた掛詞で、今夜逢う、の意と、山城と近江の境にある逢坂の関を重ねる。
 四句「ゆふつけ鳥は」は、木綿を付けた鶏のことで、逢坂の関と結び付けて詠まれ、夜明けを告げる鳥である。
 結句「鳴かずもあらなむ」は、鳴かないでいてほしい、の意で、願望の終助詞「なむ」で結ぶ。

あふさか:逢うの意と、逢坂の関の逢坂を掛ける
ゆふつけどり:鶏のこと、世の乱れの際に木綿を付けて関で祓いをした故事による
作者
よみ人しらず
出典
古今和歌集
前の歌
忍ぶれど恋しき時はあしひきの 山より月の出でてこそ来れ
次の歌
秋の夜も名のみなりけり逢ふといへば ことぞともなく明けぬるものを