思ほえず袖に湊の騒ぐかな
もろこし舟の寄りしばかりに
- 歌の意味
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思いがけず、袖に港のような波が騒ぎ立つことだ。唐の船がほんの少し寄っただけのことなのに。
- 鑑賞
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巻第十五 恋歌五 1358
詞書は前の歌に続き「題しらず」
涙と水辺に寄せる一連の三首目である。唐の船が寄っただけのわずかな縁で、袖に港の波が騒ぐほど涙があふれると詠む。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者の「読人しらず」は、名の伝わらない作者であることを示す。
この歌は『伊勢物語』第二十六段に見える。そこでは、五条辺りの女を得られなくなったと嘆いていた人への、男の返事として置かれている。
初句「思ほえず」は、思いがけず、の意である。
二句「袖に湊の」は、袖を港に見立て、そこに波が騒ぐように涙があふれることをいう。前歌の涙川から、涙の水は港へと広がる。
三句「騒ぐかな」は、詠嘆の「かな」で切れる三句切れである。
四句「もろこし舟の」は、唐から来る大きな船をいう。港に入る大船が波を立てる景に、恋の騒ぎを重ねている。
結句「寄りしばかりに」は、ほんの少し寄っただけのことで、の意である。三句からの倒置で、わずかな縁が大きな嘆きを生んだことを後から示す。
みなと:港
もろこしぶね:唐から来る船、また唐風の大きな船
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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枕のみ浮くと思ひし涙川 今はわが身の沈むなりけり
- 次の歌
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妹が袖別れし日より白妙の 衣かたしき恋ひつつぞ寝る