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枕のみ浮くと思ひし涙川
今はわが身の沈むなりけり

歌の意味
枕だけが浮くほどだと思っていた涙の川であったが、今はわが身そのものが沈むほどになったのだった。
鑑賞
巻第十五 恋歌五 1357

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 涙と水辺に寄せる一連の二首目である。かつては枕が浮くほどと思っていた涙の川が、今はわが身が沈むほどになったと、恋の苦しみの深まりを詠む。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
 作者の「坂上是則」は、平安時代前期の歌人で、大内記や加賀介を務めた。三十六歌仙の一人である。

 初句「枕のみ」は、枕だけが、の意である。前歌の初句「涙のみ」と同じ「のみ」の形で始まる。
 二句「浮くと思ひし」は、涙で枕が浮くほどだと思っていた、の意である。前歌の「浮き出づる」を受けている。
 三句「涙川」は、涙の多さを川にたとえた語である。本巻の第千三百五十首の「涙の河」を受け継ぐ。
 四句「今はわが身の」で、過去の「枕」と今の「わが身」が対比される。
 結句「沈むなりけり」は、気づきの「けり」で結び、沈むほどになったのだった、と詠嘆する。「浮く」と「沈む」という上下の対比によって、嘆きの深まりを示している。

なみだがは:涙が多く流れるのを川にたとえた語
作者
坂上是則
出典
新古今和歌集
前の歌
涙のみ浮き出づる海人の釣竿の 長き夜すがら恋ひつつぞ寝る
次の歌
思ほえず袖に湊の騒ぐかな もろこし舟の寄りしばかりに