宵ながら昼にもあらなん夏なれば
待ち暮らす間のほど無かるべく
- 歌の意味
-
昼であっても、宵のままであってほしいものだ。夏なのだから、待ち暮らす間の時が短くなるように。
- 鑑賞
-
巻第四 夏歌 205
詞書「題しらず」
昼であっても宵のままであってほしい、夏は日が長いのだから、恋しい人を待ち暮らす時間が短くなるようにと詠んだ歌である。日の長い夏の昼の、宵を待つ時間のもどかしさを表している。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。原文の作者表記は「よみ人も」とあるが、ここでは「よみ人しらず」として扱う。
なお本文の結句は「ほど無かるべく」とあり、読み仮名の行の「ほとなかるへき」と一致しない。ここでは本文の表記に従う。
初句「宵ながら」は、宵のままで、の意で、恋人の訪れる宵の時間を示している。
二句「昼にもあらなん」の「なん」は他に対する願望の終助詞で、昼でもあってほしい、の意である。宵のままで昼であってほしいと、時を入れ替える願いを表している。
三句「夏なれば」は、夏であるので、の意で、日の長い季節であることを理由として示している。
四句「待ち暮らす間の」は、一日じゅう待ち続ける間の、の意である。本巻の第百七十三首の「夏の日の暮れがたき」と同じく、夏の日の長さを嘆いている。
結句「ほど無かるべく」は、時間が短くなるように、の意で、「べく」は助動詞「べし」の連用形である。二句の願いの目的を示し、倒置になっている。
まちくらす:一日じゅう待ち続けて日を暮らす
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
後撰和歌集
- 前の歌
-
撫子の花散りがたになりにけり わが待つ秋ぞ近くなるらし
- 次の歌
-
夏の夜の月はほどなく明けぬれば 朝の間をぞかこちよせつる