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春雨の降らば野山にまじりなむ
梅の花笠ありといふなり

歌の意味
春雨が降るならば、野山に分け入っていこう。梅の花笠というものがあるということだから。
鑑賞
巻第一 春歌上 32

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 春雨が降っても、梅の花笠があるというから、それをかぶって野山に分け入ろうと詠んだ歌である。梅の花を笠に見立てる言い伝えを踏まえた、遊び心のある歌である。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
 「梅の花笠」は、古今和歌集の神遊びの歌「青柳を片糸によりて鴬の縫ふてふ笠は梅の花笠」に見える語で、鴬が縫うという梅の花の笠をいう。

 初句「春雨の」は、春に降る細かな雨を示す。春雨は本巻の第四首や第四十首などにも詠まれている。
 二句「降らば野山に」は、雨が降るならば野山に、の意で、仮定の条件を示す。
 三句「まじりなむ」の「なむ」は強い意志を表し、野山に分け入ってしまおう、の意である。ここで句切れとなる。
 四句「梅の花笠」は、梅の花を笠に見立てたもので、雨をしのぐ笠として詠んでいる。
 結句「ありといふなり」の「なり」は伝聞を表し、そういうものがあると聞いている、の意である。

まじる:分け入る、入り込む
はながさ:花で作った笠、また花を笠に見立てていう語
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
梅の花香を吹きかくる春風に 心を染めば人やとがめむ
次の歌
かきくらし雪は降りつつしかすがに 我が家の園に鴬ぞ鳴く