山彦は君にも似たる心かな
我が声せねばおとづれもせず
- 歌の意味
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山彦はあなたにも似た心であることよ。私が声を出さなければ、音を返すことも、訪れてくることもない。
- 鑑賞
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巻第十一 恋歌一 644
詞書「題しらず」
山彦はあなたに似た心だ、こちらが声を出さなければ音も返さず訪れもしない、と詠む歌である。「おとづれ」に山彦の「音」と人の「訪れ」を重ね、自分から働きかけなければ何の便りもよこさない相手の冷たさを、山彦の性質になぞらえて恨んでいる。前歌の第六百四十三首が答えない山彦を詠んだのに対し、この歌は呼べば答える山彦を相手にたとえ、山彦の答える答えないで対をなしている。
初句「山彦は」は、こだまは、の意で、前歌の第六百四十三首の初句「山彦も」と同じ語である。
二句「君にも似たる」は、あなたにも似ている、の意である。
三句「心かな」は、心であることよ、の意で、ここで句切れとなる三句切れの歌である。
四句「我が声せねば」は、私が声を出さなければ、の意で、「ね」は打消の助動詞「ず」の已然形である。
結句「おとづれもせず」は、「おとづれ」が山彦の「音」を返す意と、人が「訪れ」る意を掛ける掛詞である。前歌の二句「答へぬ山の」と応じている。
おとづる:音を立てる意と、訪れる意を掛ける
やまびこ:山彦。こだま
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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山彦も答へぬ山の呼子鳥 我ひとりのみなきやわたらむ
- 次の歌
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あしひきの山下とよみ行く水の 時ぞともなく恋ひわたるかな