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石上古き都を来て見れば
昔かざしし花咲きにけり

歌の意味
石上の古い都に来て見ると、昔、髪に挿した花が今も咲いていたことだ。
鑑賞
巻第一 春歌上 88

詞書「題しらず」
 桜の一連の十首目である。廃れた古い都に、昔と変わらず花が咲いていることを詠む。詞書は「題しらず」で、詠作の事情は伝わっていない。
 作者は「よみ人しらず」とあり、人名は伝わっていない。
 場面は桜の咲くころ、場所は大和国の石上、すなわち現在の奈良県天理市のあたりである。「古き都」は奈良の旧都を指す。
 詠まれた直接の契機は伝わらない。

 初句「石上」は「ふる」に掛かる枕詞である。同時に実在の地名でもあり、枕詞と地名の両方の働きをもつ。
 二句「古き都を」で、その「ふる」が「古き」として現れる。奈良の旧都であり、本巻で繰り返されてきた「ふるさと」の主題がここでも現れる。
 三句「来て見れば」は、実際に足を運んだことを示す。第二十二首が「古里」の春日の原を詠んだのと同じ土地の系列である。
 四句「昔かざしし」の「かざす」は、花や枝を髪や冠に挿すことをいう。かつてこの地が栄えていたころ、人々が花を挿して遊んだ記憶が呼び起こされる。
 結句「花咲きにけり」の「けり」は詠嘆である。人の世は移り、都は古びたのに、花だけは昔と同じに咲いている。第四十七首の俊成女歌が変わらないものを数え上げたのと同じ構図が、ここでは都の荒廃を背景として現れている。

いそのかみ:「ふる」に掛かる枕詞。また大和国の地名
かざす:花や枝を髪や冠に挿す
作者
よみ人しらず
出典
新古今和歌集
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