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夜もすがら濡れてわびつる唐衣
逢坂山に道まどひして

歌の意味
一晩中、濡れてつらい思いをしたこの唐衣よ。逢坂山で道に迷ってしまって。
鑑賞
巻第十 恋歌二 622

詞書「女につかはしける」
 逢坂山で道に迷い、一晩中衣を濡らしてつらい思いをした、と詠んだ歌である。逢いに行きながら逢えずに夜を明かした嘆きを、「逢ふ」の名を持つ逢坂山で道に迷ったことに託している。
 詞書によれば、女に送った歌である。本巻の第六百七首も「夜もすがら」と詠み、夜通し逢えずに過ごす嘆きを共有している。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「夜もすがら」は、一晩中、の意である。本巻の第六百七首の三句と同じ語である。
 二句「濡れてわびつる」は、露や涙に濡れてつらい思いをした、の意である。
 三句「唐衣」は、美しい衣のことで、ここで句切れとなる。
 四句「逢坂山に」は、近江と山城の境にある歌枕の逢坂山で、の意で、その名に「逢ふ」を響かせている。
 結句「道まどひして」は、道に迷って、の意で、初句から三句までと倒置の関係にある。

からころも:美しい衣、衣の美称
あふさかやま:近江と山城の境にある山、「逢ふ」を響かせる歌枕
みちまどひ:道に迷うこと
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
天の戸をあけぬあけぬと言ひなして 空鳴きしつる鳥の声かな
次の歌
思へどもあやなしとのみ言はるれば 夜の錦の心地こそすれ