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思ふとも恋ふとも逢はむものなれや
結ふ手もたゆく解くる下紐

歌の意味
いくら思っても恋しても逢えるものだろうか、いや逢えはしない。それなのに、結ぶ手もだるくなるほど下紐が何度もほどけることだ。
鑑賞
巻第十一 恋歌一 507

詞書「題しらず」
 下紐がひとりでに解けるのは恋人に逢える前兆という俗信を踏まえ、いくら恋しても逢えないのに、下紐ばかりが何度も解けると嘆く歌である。結び直す手がだるくなるほどという誇張に、むなしい期待を抱かされる者のやるせなさがこもっている。

 初句「思ふとも」は、いくら思っても、の意である。
 二句「恋ふとも逢はむ」は、恋い慕っても逢えるだろうかの意で、初句と「とも」を重ねて思いの強さを表している。
 三句「ものなれや」の「なれや」は反語で、逢えるものだろうか、いや逢えはしないの意となる。三句で切れる。
 四句「結ふ手もたゆく」は、結び直す手もだるくなるほどの意で、「たゆし」はだるい、疲れるの意である。
 結句「解くる下紐」は、ほどける下紐よの意で、体言止めで結んでいる。下紐が自然に解けるのは恋人に逢える前兆とされた。本巻の第五百四十一首の「入れ紐」も、紐を結ぶことに恋を託している。

ゆふ:結ぶ
したひも:下袴や下着の紐
作者
よみ人しらず
出典
古今和歌集
前の歌
人知れぬ思ひやなぞと芦垣の 間近けれども逢ふよしのなき
次の歌
いで我を人なとがめそ大船の ゆたのたゆたに物思ふころぞ