人知れぬ思ひやなぞと芦垣の
間近けれども逢ふよしのなき
- 歌の意味
-
人に知られない恋の思いとは、いったいどういうわけなのか。芦垣を隔てたほど間近にいるのに、逢う手立てもない。
- 鑑賞
-
巻第十一 恋歌一 506
詞書「題しらず」
すぐ近くにいながら逢うことのできない恋の不条理を嘆く歌である。芦で編んだ粗い垣根一つ隔てただけの近さでありながら、人に知られない恋であるために逢う手立てがないもどかしさを詠んでいる。距離の近さと心の遠さの対比が際立つ一首である。
初句「人知れぬ」は、人に知られないの意である。本巻の第五百三十四首も同じ「人知れぬ思ひを」の句で始まる。
二句「思ひやなぞと」は、恋の思いとはどういうわけなのかの意で、「なぞ」は疑問を表し、自らの恋に問いかけている。
三句「芦垣の」は、芦で編んだ垣根のことで、垣根の編み目が近いことから四句の「間近」にかかる枕詞である。
四句「間近けれども」は、すぐ近くにいるけれどもの意である。
結句「逢ふよしのなき」は、逢う手立てがないの意で、連体形で結んで嘆きの余韻を残している。本巻の第四百九十七首の「逢ふよしをなみ」と同じく、逢う手段のない嘆きを詠んでいる。
あしがき:芦で編んだ垣根。「間近」などにかかる枕詞
よし:手立て、方法
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
古今和歌集
- 前の歌
-
浅茅生の小野の篠原しのぶとも 人知るらめや言ふ人なしに
- 次の歌
-
思ふとも恋ふとも逢はむものなれや 結ふ手もたゆく解くる下紐