古典和歌stream

浅茅生の小野の篠原しのぶとも
人知るらめや言ふ人なしに

歌の意味
浅茅の生える小野の篠原の「しの」ではないが、どんなに忍んで恋い慕っても、あの人は知っているだろうか。伝える人もいないのに。
鑑賞
巻第十一 恋歌一 505

詞書「題しらず」
 丈の低い茅の生える野の篠原を序とし、忍んで恋い続けても、伝える人がいなければ相手は知るはずもないと嘆く歌である。「篠原」から同じ音の「しのぶ」を導く序詞が、人目を忍ぶ恋の寂しさを印象づけている。後撰和歌集に収められた源等の歌「浅茅生の小野の篠原しのぶれどあまりてなどか人の恋しき」は、この歌を本歌としたもので、小倉百人一首にも採られている。

 初句「浅茅生の」は、丈の低い茅が生えている所の意で、荒れた野の景を示す。
 二句「小野の篠原」の「小野」は野原、「篠原」は篠竹の生えている原で、初句からここまでが三句の「しのぶ」を同じ音で導く序詞である。
 三句「しのぶとも」は、こらえ忍んで恋い慕ってもの意である。
 四句「人知るらめや」は、あの人は知っているだろうか、いや知るまいの意で、四句で切れる。前歌の第五百四首の二句と同じ句で、人に知られない恋が続けて詠まれている。
 結句「言ふ人なしに」は、伝えてくれる人もいないのにの意で、四句の理由を後から示す倒置の構成である。本巻の第四百八十五首の結句「人し告げずは」と同じく、恋を伝える人のいない嘆きである。

あさぢふ:丈の低い茅が生えている所
しのはら:篠竹の生えている原
しのぶ:こらえる。人目を忍んで恋い慕う
作者
よみ人しらず
出典
古今和歌集
前の歌
わが恋を人知るらめや敷妙の 枕のみこそ知らば知るらめ
次の歌
人知れぬ思ひやなぞと芦垣の 間近けれども逢ふよしのなき