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いで我を人なとがめそ大船の
ゆたのたゆたに物思ふころぞ

歌の意味
さあ、人よ、私を責めないでくれ。大船がゆらゆらと揺れるように、心が揺れ動いて物思いにふけっているころなのだから。
鑑賞
巻第十一 恋歌一 508

詞書「題しらず」
 恋のために心が定まらず、ぼんやりと物思いにふける自分を、どうか責めないでほしいと周囲の人に訴える歌である。大船がゆったりと揺れるさまを序とし、「ゆたのたゆたに」という独特の響きの語で、揺れ動いて落ち着かない心を表している。

 初句「いで我を」の「いで」は、さあ、いやもうと相手に呼びかける感動詞である。
 二句「人なとがめそ」は、人よ、責めないでくれの意で、「な〜そ」は禁止を表す。二句で切れる。
 三句「大船の」は、大きな船のことで、ゆったりと揺れるさまから四句の「ゆたのたゆたに」を導く序詞である。
 四句「ゆたのたゆたに」は、ゆらゆらと揺れ動いて定まらないさまを表す語で、揺れる船と揺れる心を重ねている。次歌の第五百九首も、海に浮かぶ浮子に定まらない心をたとえている。
 結句「物思ふころぞ」は、物思いにふけっている時なのだからの意で、「ぞ」は強く言い切る終助詞である。

いで:さあ、いやもう。呼びかけや強調の感動詞
とがむ:責める、非難する
ゆたのたゆたに:ゆらゆらと揺れ動いて定まらないさま
作者
よみ人しらず
出典
古今和歌集
前の歌
思ふとも恋ふとも逢はむものなれや 結ふ手もたゆく解くる下紐
次の歌
伊勢の海に釣りする海人の浮子なれや 心ひとつを定めかねつる