思へどもあやなしとのみ言はるれば
夜の錦の心地こそすれ
- 歌の意味
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心から思っているのに、筋の通らないことだとばかり言われるので、夜に着る錦のように、甲斐のない気持ちがする。
- 鑑賞
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巻第十 恋歌二 623
詞書「男につかはしける」
心から思っているのに筋の通らないことだとばかり言われるので、夜の錦のような甲斐のない気持ちがする、と詠んだ歌である。思いを受けとめてもらえないむなしさを、誰にも見られない夜の錦にたとえている。
詞書によれば、男に送った歌である。夜の錦は、富貴になって故郷に帰らないのは錦を着て夜道を行くようなものだという『史記』の言葉に由来し、古今和歌集の紀貫之の歌にも「夜の錦」と詠まれている。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「思へども」は、心から思っているけれども、の意である。
二句「あやなしとのみ」の「あやなし」は、筋が通らない意で、「あや」は錦の模様の意を響かせ、結句の「錦」の縁語となっている。
三句「言はるれば」は、言われるので、の意である。
四句「夜の錦の」は、夜に着る錦の、の意で、誰にも見られず甲斐のないもののたとえである。
結句「心地こそすれ」は、気持ちがする、の意で、「こそ」は強めの係助詞、已然形「すれ」で結ぶ係り結びとなっている。
あや:綾、錦の模様、筋道
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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夜もすがら濡れてわびつる唐衣 逢坂山に道まどひして
- 次の歌
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音にのみ聞きこし三輪の山よりも 杉の数をば我ぞ見えにし