音にのみ聞きこし三輪の山よりも
杉の数をば我ぞ見えにし
- 歌の意味
-
うわさにばかり聞いてきた三輪の山の杉よりも、その杉の数ほど多く、私はあなたのもとに姿を見せてきたのだ。
- 鑑賞
-
巻第十 恋歌二 624
詞書「女のもとにつかはしける」
うわさに聞いてきた三輪の山の杉よりも、その杉の数ほど多く私はあなたのもとに通ってきた、と詠んだ歌である。訪ね来よと杉を目印にした三輪の山の言い伝えを踏まえ、自分の通いの多さを訴えている。
詞書によれば、女のもとに送った歌である。古今和歌集の「我が庵は三輪の山もと恋しくはとぶらひ来ませ杉立てる門」を踏まえ、杉を訪ねる目印として詠んでいる。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「音にのみ」は、うわさにばかり、の意である。
二句「聞きこし三輪の」は、聞いてきた三輪の、の意で、三輪は大和の国の歌枕である。
三句「山よりも」は、三輪の山の杉よりも、の意である。
四句「杉の数をば」は、杉の数ほど多くを、の意で、三輪の山の門に立つ杉を踏まえている。
結句「我ぞ見えにし」は、私はあなたに姿を見せてきたのだ、の意で、「ぞ」は強めの係助詞、過去の助動詞「き」の連体形「し」で結ぶ係り結びとなっている。
みわのやま:大和の国の三輪山、杉が名高い歌枕
みゆ:姿を見せる、人のもとを訪れる
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
後撰和歌集
- 前の歌
-
思へどもあやなしとのみ言はるれば 夜の錦の心地こそすれ
- 次の歌
-
難波潟刈りつむ葦の葦筒の 一重も君を我や隔つる