古典和歌stream

身の憂きを人のつらきと思ふこそ
我とも言はじわりなかりけれ

歌の意味
我が身の不運のつらさを、あの人の薄情のせいだと思うことこそ、自分のことながら我が心とも言うまい、道理に合わないことであった。
鑑賞
巻第十五 恋歌五 945

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 我が身の不運のつらさを、あの人の薄情のせいだと思ってしまうことこそ、自分の心とも言えないほど道理に合わないことだった、と詠む歌である。恋の苦しみを相手のせいにしてしまう自分の心を省み、その理不尽さを嘆いている。

 初句「身の憂きを」は、我が身の不運のつらさを、の意である。本巻の第九百五十三首の「我が身ひとつの憂き」と、つらさを我が身のものと見る点が通じている。
 二句「人のつらきと」は、あの人の薄情のせいだと、の意である。初句の「身」と二句の「人」とを対比している。
 三句「思ふこそ」は、思うことこそ、の意で、係助詞「こそ」が結句と係り結びをなしている。
 四句「我とも言はじ」は、自分の心とも言うまい、の意で、「じ」は打消の意志を表す。挿入句となっている。
 結句「わりなかりけれ」は、道理に合わないことであった、の意で、詠嘆の助動詞「けり」の已然形「けれ」で三句の「こそ」を受けて結んでいる。本巻の第九百四十三首の初句「わりなしや」と、「わりなし」の語を共有している。

み:身。我が身、自分の境遇
作者
よみ人しらず
出典
拾遺和歌集
前の歌
憂しと思ふものから人の恋しきは いづこを忍ぶ心なるらん
次の歌
つらしとは思ふものから恋しきは 我にかなはぬ心なりけり