秋風の草葉そよぎて吹くなへに
ほのかにしつるひぐらしの声
- 歌の意味
-
秋風が草葉をそよがせて吹くのにつれて、ほのかに聞こえてきたひぐらしの声よ。
- 鑑賞
-
巻第五 秋歌上 253
詞書「題しらず」
秋風が草葉をそよがせて吹くのにつれて、ひぐらしの声がほのかに聞こえてきたと詠んだ歌である。草葉の葉ずれの音と、かすかな蝉の声とを重ね、秋の夕べの静かな情景を描いている。
次歌からは紀貫之のひぐらしの歌が続き、本歌はその導きとなっている。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「秋風の」は、秋風が、の意で、前歌の第二百五十二首の「秋風吹くと」を受けている。
二句「草葉そよぎて」は、草の葉をそよがせて、の意で、風に揺れる葉の音を表す。
三句「吹くなへに」の「なへに」は、それにつれて、と同時に、の意の接続助詞である。次歌の第二百五十四首も「鳴きつるなへに」と同じ語を用いている。
四句「ほのかにしつる」は、かすかに聞こえた、の意で、「つる」は完了の助動詞「つ」の連体形である。
結句「ひぐらしの声」は体言止めで、かすかな声の余韻を残している。次歌の第二百五十四首と第二百五十五首は、ともに初句「ひぐらしの」と声を受けている。
ひぐらし:夏の終わりから秋にかけて、夕暮れなどにカナカナと鳴く蝉
そよぐ:風に吹かれてそよそよと音を立てる
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
後撰和歌集
- 前の歌
-
行く蛍雲の上まで去ぬべくは 秋風吹くと雁に告げこせ
- 次の歌
-
ひぐらしの声聞く山の近けれや 鳴きつるなへに入り日さすらん