行く蛍雲の上まで去ぬべくは
秋風吹くと雁に告げこせ
- 歌の意味
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飛んでいく蛍よ、雲の上まで行けるのなら、地上ではもう秋風が吹いていると雁に告げてくれ。
- 鑑賞
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巻第五 秋歌上 252
詞書「題しらず」
飛んでいく蛍に向かって、雲の上まで行けるのなら、地上ではもう秋風が吹いていると雁に告げてほしいと呼びかけた歌である。秋風の訪れとともに、秋の使いである雁の飛来を待ちわびる心を表している。
伊勢物語の第四十五段にも、男を慕いながら亡くなった娘の喪に籠った男が、飛ぶ蛍を見て詠んだ歌として見える。
作者の「業平朝臣」は在原業平である。平城天皇の皇子阿保親王の子で、母は桓武天皇の皇女伊都内親王である。右近衛権中将に至り、在五中将とも呼ばれた。伊勢物語の主人公に擬せられ、六歌仙、三十六歌仙の一人である。
初句「行く蛍」は、飛んでいく蛍、の意で、夏の名残の蛍に呼びかけている。
二句「雲の上まで」は、雲の上まで、の意で、雁の飛ぶ高い空を示す。
三句「去ぬべくは」の「べく」は可能の助動詞「べし」の連用形、「は」は仮定を表し、行くことができるのなら、の意である。
四句「秋風吹くと」は、秋風が吹いていると、の意で、前歌の第二百五十一首に続いて秋風の訪れを詠んでいる。
結句「雁に告げこせ」の「こせ」は、相手に望む意を表す助動詞「こす」の命令形で、雁に告げてくれ、の意である。
いぬ:去る、行ってしまう
かり:秋に北から渡ってくる鳥、雁
- 作者
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在原業平
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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松虫の初声誘ふ秋風は おとは山より吹きそめにけり
- 次の歌
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秋風の草葉そよぎて吹くなへに ほのかにしつるひぐらしの声