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松虫の初声誘ふ秋風は
おとは山より吹きそめにけり

歌の意味
松虫の初声を誘う秋風は、音羽山から吹き始めたのだった。
鑑賞
巻第五 秋歌上 251

詞書「題しらず」
 松虫の初声を誘う秋風は、音羽山から吹き始めたのだと詠んだ歌である。「音羽山」の名に「音」を響かせ、虫の声を誘う風がその名の山から吹くという機知を表している。
 本巻ではこの歌から、松虫、ひぐらし、きりぎりすなど、秋の虫の声を詠む歌が続いていく。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「松虫の」は、松虫の、の意で、「松」には「待つ」の意が響いている。本巻の第二百五十五首、第二百五十九首、第二百六十首、第二百六十一首にも松虫が詠まれている。
 二句「初声誘ふ」は、その年初めての鳴き声を誘い出す、の意である。
 三句「秋風は」は、秋風は、の意で、前歌の初句「秋風の」を受けている。
 四句「おとは山より」の「おとは山」は、山城国と近江国の境の山で、その名に虫の声の「音」を響かせている。
 結句「吹きそめにけり」は、吹き始めたのだった、の意で、「に」は完了、「けり」は気づきの詠嘆を表す。

おとはやま:山城国と近江国の境にある山、その名に「音」を響かせる
まつむし:秋に鳴く虫、名に「待つ」の意を響かせて詠まれる
はつこゑ:その季節に初めて聞く鳥や虫の鳴き声
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
秋風の吹けばさすがにわびしきは 世のことわりと思ふものから
次の歌
行く蛍雲の上まで去ぬべくは 秋風吹くと雁に告げこせ