古典和歌stream

夢よ夢恋しき人に逢ひ見すな
覚めての後にわびしかりけり

歌の意味
夢よ、夢よ、恋しい人に逢わせて見せないでおくれ。覚めた後にはかえってつらかったのだから。
鑑賞
巻第十二 恋歌二 709

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 夢に向かって、恋しい人に逢わせないでほしい、覚めた後がかえってつらかったからと呼びかける歌である。夢で逢えた喜びが、目覚めとともに深い寂しさに変わる経験を踏まえ、夢での逢瀬さえ拒むほどの切なさを表している。前歌の第七百八首とともに夢を詠み、次の第七百十首から続く、逢った後の恋しさを詠む歌へとつながっていく。

 初句「夢よ夢」は、夢よ、夢よ、の意で、夢に呼びかけて重ねている。前歌の第七百八首の初句「夢かとも」と、夢の語を共有している。
 二句「恋しき人に」は、恋しい人に、の意である。
 三句「逢ひ見すな」は、逢わせないでくれ、の意で、「見す」は見させる、「な」は禁止を表す終助詞である。ここで句切れとなる三句切れの歌である。
 四句「覚めての後に」は、目覚めた後には、の意である。次歌の第七百十首の初句と二句「逢ひ見ての後の」と、「後」の語を共有している。
 結句「わびしかりけり」は、つらかったのだ、の意で、「けり」は気づきの詠嘆を表す。

あひみす:逢ひ見す。逢わせる、見せる
作者
よみ人しらず
出典
拾遺和歌集
前の歌
夢かとも思ふべけれど寝やはせし 何ぞ心に忘れがたきは
次の歌
逢ひ見ての後の心にくらぶれば 昔はものも思はざりけり