天雲のうきたることと聞きしかど
なほぞ心はそらになりにし
- 歌の意味
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空の雲のように浮ついた根拠のない話だとは聞いたけれども、やはり私の心は空のように上の空になってしまった。
- 鑑賞
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巻第十六 雑歌二 1142
詞書「返し、女の母」
空の雲のように浮ついた話だとは聞いたが、それでも心は上の空になってしまった、と詠んだ歌である。前歌の空と雲の縁を受け、うわさと知りつつ遠い陸奥の娘を案じて落ち着かない母の心を表している。
前歌の男の歌に対する、娘の母の返しである。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。詞書によれば娘の母である。
初句「天雲の」は、空の雲の、の意で、前歌の「雲居路」を受けている。
二句「うきたることと」は、浮ついた根拠のないことと、の意で、「うき」に雲が「浮き」たる意と、「憂き」を掛けている。
三句「聞きしかど」は、聞いたけれども、の意で、「しか」は過去の助動詞「き」の已然形、「ど」は逆接を表す。
四句「なほぞ心は」は、やはり心は、の意で、「ぞ」は強意の係助詞で、結句の連体形「し」で結ぶ係り結びとなっている。
結句「そらになりにし」は、上の空になってしまった、の意で、「そら」に「空」と心の落ち着かない意を掛け、前歌の「そら事」に応じている。
うく:雲が浮く意と、「憂し」を掛ける
そら:空の意と、心が落ち着かない意を掛ける
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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雲居路のはるけきほどのそら事は いかなる風の吹きて告げけん
- 次の歌
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やれば惜しやらねば人に見えぬべし 泣く泣くもなほ返すまされり