やれば惜しやらねば人に見えぬべし
泣く泣くもなほ返すまされり
- 歌の意味
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破り捨てれば惜しい、破らずにおけば人に見られてしまうだろう。泣く泣くでも、やはりお返しするのがまさっている。
- 鑑賞
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巻第十六 雑歌二 1143
詞書「たまさかに通へる文を乞ひ返しければ、その文に具してつかはしける」
破れば惜しく、破らなければ人に見られるだろう、泣く泣くでもやはり返すのがよい、と詠んだ歌である。女から手紙を返すよう求められ、捨てるにしのびず手もとに置けば人目に触れるとためらった末に、涙ながらに返す心を率直に詠んでいる。
詞書によれば、たまに交わした手紙を女が返してほしいと求めたので、その手紙に添えて送った歌である。
作者の「もとよしのみこ」は元良親王である。陽成天皇の第一皇子で、色好みとして知られ、家集に元良親王集がある。小倉百人一首には「わびぬれば今はた同じ難波なる」の歌が採られている。
初句「やれば惜し」は、破り捨てれば惜しい、の意で、「やる」は破る意である。ここで句切れとなる。
二句「やらねば人に」は、破らずにおけば人に、の意で、初句と対になる言い方を重ねている。
三句「見えぬべし」は、見られてしまうだろう、の意で、「ぬべし」は強い推量を表す。ここで句切れとなる。
四句「泣く泣くもなほ」は、泣く泣くでもやはり、の意である。
結句「返すまされり」は、返すのがまさっている、の意で、「り」は存続の助動詞である。詞書の「乞ひ返し」に応じている。
やる:破る。引き裂く
こひかへす:返すように求める
- 作者
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元良親王
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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天雲のうきたることと聞きしかど なほぞ心はそらになりにし
- 次の歌
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望月の駒より遅く出でつれば たどるたどるぞ山は越えつる