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花の色は昔ながらに見し人の
心のみこそうつろひにけれ

歌の意味
花の色は昔のままであるのに、かつて逢っていたあの人の心だけが、すっかり移ろってしまったことだ。
鑑賞
巻第三 春歌下 102

詞書「元良の親王、兼茂朝臣の娘に住み侍りけるを、法皇の召してかの院にさぶらひければ、え逢ふことも侍らざりければ、明くる年の春、桜の枝に挿して、かの曹司に挿し置かせ侍りける」
 花の色は昔のままなのに、かつて逢った人の心だけが移ろってしまったと嘆いた歌である。変わらない花の色と、変わってしまった恋人の心とを対比させ、逢えなくなった恨みを表している。
 詞書によれば、元良親王が藤原兼茂の娘のもとに通っていたが、宇多法皇が彼女を召して院に仕えさせたため逢うこともできなくなり、翌年の春、この歌を桜の枝に付けて、彼女の部屋に挿し置かせたものである。
 作者の「もとよしのみこ」は元良親王である。陽成天皇の第一皇子で、三品兵部卿に至った。恋の歌を多く残し、色好みとして知られる。

 初句「花の色は」は、贈った桜の花の色を示す。巻頭の第八十一首が変わらない鴬の声と変わった我が身を対比させたのと同じ構図で、本歌は変わらない花の色と変わった人の心を対比させている。
 二句「昔ながらに」は、昔のままに、の意である。
 三句「見し人の」の「見し」は、逢った、契りを結んだ、の意で、「し」は過去の助動詞「き」の連体形である。
 四句「心のみこそ」の「こそ」は係助詞で、結句の已然形「けれ」と係り結びをなし、心だけが、と強調している。
 結句「うつろひにけれ」は、花の色があせる意の「うつろふ」を、人の心変わりに転じている。本巻の第八十二首の「うつろひにけり」が花の色の移ろいを詠んだのと対応している。

みる:男女が逢う、契りを結ぶ
すむ:男が女のもとに通う
ざうし:宮中や院に仕える女房の部屋
うつろふ:色があせる、また心が変わる
作者
元良親王
出典
後撰和歌集
前の歌
鴬に身をあひかへば散るまでも 我が物にして花は見てまし
次の歌
あたら夜の月と花とを同じくは あはれ知れらん人に見せばや