鴬に身をあひかへば散るまでも
我が物にして花は見てまし
- 歌の意味
-
もし鴬と我が身を取り替えることができるなら、花が散るまでも、自分のものとして花を見ていように。
- 鑑賞
-
巻第三 春歌下 101
詞書「題しらず」
花に宿る鴬と我が身を取り替えられるなら、散るまで花を自分のものとして見ていられるのにと願った歌である。花のそばを離れない鴬をうらやみ、花を独り占めしたいほどの愛着を表している。
作者の伊勢は伊勢守藤原継蔭の娘で、宇多天皇の中宮温子に仕えた。宇多天皇の寵愛を受け、のちに敦慶親王との間に中務をもうけた。三十六歌仙の一人である。
初句「鴬に」は、花に宿って鳴く鴬を示す。巻頭の第八十一首も鴬で始まっている。
二句「身をあひかへば」の「あひかふ」は互いに取り替える意で、「ば」は仮定を表し、結句の「まし」と呼応する。
三句「散るまでも」は、花が散ってしまうまでも、の意である。
四句「我が物にして」は、自分のものとして、の意で、花を独り占めにしたい思いを表す。
結句「花は見てまし」の「まし」は反実仮想で、花を見ていられるだろうに、とかなわない願いを表している。
あひかふ:互いに取り替える
- 作者
-
伊勢
- 出典
-
後撰和歌集
- 前の歌
-
春日さす藤のうら葉のうらとけて 君し思はば我も頼まん
- 次の歌
-
花の色は昔ながらに見し人の 心のみこそうつろひにけれ