あひにあひて物思ふころの我が袖に
宿る月さへ濡るる顔なる
- 歌の意味
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折も折、ぴったりと合わさるように物思いにふけるこの頃、涙に濡れた私の袖に映る月までもが、濡れた顔をしている。
- 鑑賞
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巻第十五 恋歌五 756
詞書「題しらず」
恋の物思いに沈む時期に、涙で濡れた袖に映る月までもが泣き濡れた顔をしているように見えると詠む歌である。月を自分の悲しみに寄り添う存在として擬人化し、涙を直接言わずに袖の月で示す優美な表現が評価されている。
作者の伊勢は、伊勢守藤原継蔭の娘で、宇多天皇の中宮温子に仕えた。宇多天皇の寵を受けて皇子を産み、のちに敦慶親王との間に中務を産んだ。三十六歌仙の一人で、古今和歌集の女性歌人として最も多くの歌が採られている。
初句「あひにあひて」は、ちょうどぴったり合う意で、物思いの時期と月の夜がちょうど重なったことをいう。字余りの句である。
二句「物思ふころの」は、恋の悩みに沈んでいる頃の意で、「物思ふ」は恋の物思いを指す。
三句「我が袖に」は、自分の袖をいい、四句の「宿る」の場所を示す。袖が涙で濡れていることは結句で明らかになる。
四句「宿る月さへ」は、袖の涙に月が映ることを「宿る」と擬人化し、「さへ」でまでもの意を添える。
結句「濡るる顔なる」は、月までも濡れた顔をしているの意で、月が自分と同じく泣いているかのように見る。涙を言わずに悲しみの深さを伝える。
ものおもふ:恋の悩みに思い沈む
やどる:月の光が水や涙に映る
- 作者
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伊勢
- 出典
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古今和歌集
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うきめのみ生ひて流るる浦なれば かりにのみこそ海人は寄るらめ
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秋ならで置く白露は寝覚めする 我が手枕の雫なりけり