秋ならで置く白露は寝覚めする
我が手枕の雫なりけり
- 歌の意味
-
秋でもないのに置く白露は、夜中に目を覚ましてしまう私の手枕に落ちる涙の雫であったのだ。
- 鑑賞
-
巻第十五 恋歌五 757
詞書「題しらず」
秋でもないのに露が置いていると思ったら、それは眠れずに目覚めた自分の涙だったと気づく歌である。秋の景物である白露を涙に見立て、独り寝の寂しさを「手枕」の一語で示している。
初句「秋ならで」は、「で」が打消の接続助詞で、秋ではないのにの意となる。露は本来秋のものであることを前提とした表現である。
二句「置く白露は」は、白く光る露をいい、涙の見立てとなる。係助詞「は」で主題を示し、結句で正体を明かす構成である。
三句「寝覚めする」は、夜中に目を覚ますことで、恋の物思いのために眠れないさまを表す。
四句「我が手枕の」は、自分の腕を枕にすることで、共寝する相手のいない独り寝を示す。
結句「雫なりけり」は、「なりけり」が気づきの詠嘆で、露と見えたものが実は涙の雫であったと明かす。見立ての種明かしで一首を結ぶ。
ねざめ:夜中に目が覚めること
たまくら:自分の腕を枕にすること
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
古今和歌集
- 前の歌
-
あひにあひて物思ふころの我が袖に 宿る月さへ濡るる顔なる
- 次の歌
-
須磨の海人の塩焼き衣をさをあらみ まどほにあれや君が来まさぬ