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須磨の海人の塩焼き衣をさをあらみ
まどほにあれや君が来まさぬ

歌の意味
須磨の海人が塩を焼くときに着る衣は、筬の目が粗いので織り目が間遠である。そのように私たちの仲も間遠になってしまったからか、あなたはおいでにならない。
鑑賞
巻第十五 恋歌五 758

詞書「題しらず」
 塩焼き衣の織り目の粗さから、訪れが間遠になった恋人を嘆く歌である。上三句が序詞となって「まどほ」を導き、海辺の労働着という素朴な物から恋の嘆きへと転じている。
 『万葉集』巻三にも「須磨の海人の塩焼き衣の藤衣間遠にしあればいまだ着なれず」があり、須磨の塩焼き衣を間遠の比喩とする発想が古くからあったことがわかる。

 初句「須磨の海人の」は、摂津国の歌枕である須磨の海人をいう。須磨は塩焼きの地として知られ、字余りの句である。
 二句「塩焼き衣」は、海人が塩を焼くときに着る粗末な衣である。初句からここまでが序詞の中心となる。
 三句「をさをあらみ」は、「をさ」が機織りで縦糸を整える道具の筬で、「を〜み」は原因を表し、筬の目が粗いのでの意となる。
 四句「まどほにあれや」は、「まどほ」に衣の織り目が粗いことと、訪れが間遠であることを掛ける。「や」は疑問で、結句の連体形で結ぶ。
 結句「君が来まさぬ」は、「来まさぬ」が「来」の尊敬語「来ます」に打消の「ず」の連体形が付いた形で、あなたがおいでにならないの意となる。

しほやきごろも:塩を焼く海人が着る粗末な衣
をさ:機織りの道具で、縦糸を整え横糸を打ち込むもの
まどほ:織り目が粗い意と、訪れが間遠である意を掛ける
きます:「来」の尊敬語で、おいでになる
作者
よみ人しらず
出典
古今和歌集
前の歌
秋ならで置く白露は寝覚めする 我が手枕の雫なりけり
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山城の淀の若菰かりにだに 来ぬ人頼む我ぞはかなき