望月の駒より遅く出でつれば
たどるたどるぞ山は越えつる
- 歌の意味
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望月の駒よりも遅れて出発したので、道をたどりたどりしながら、山は越えてきたことだ。
- 鑑賞
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巻第十六 雑歌二 1144
詞書「延喜御時、御馬をつかはして、早く参るべきよし仰せつかはしたりければ、すなはち参りて、仰せごと承れる人につかはしける」
望月の駒より遅れて出たので、たどりたどり山を越えてきた、と詠んだ歌である。帝が遣わした馬を名馬の産地として名高い望月の駒になぞらえ、その駒に後れをとって山道に難儀したと、急ぎ参上した道中を戯れまじりに語っている。
詞書によれば、醍醐天皇の延喜の御代に、帝が馬を遣わして早く参上せよと仰せになったので、すぐに参上し、その仰せを伝えた人に送った歌である。
作者の素性法師は、僧正遍昭の子で、出家して雲林院などに住んだ。三十六歌仙の一人で、小倉百人一首には「今来むと言ひしばかりに長月の」の歌が採られている。
初句「望月の」は、信濃国望月の牧の、の意で、名馬の産地として知られた。満月の意も響き、明るい月の夜を思わせている。
二句「駒より遅く」は、馬よりも遅れて、の意で、遣わされた馬を望月の駒に見立てている。
三句「出でつれば」は、出発したので、の意で、「つれ」は完了の助動詞「つ」の已然形である。
四句「たどるたどるぞ」は、たどりたどりしながら、の意で、同じ語を重ねて山道の難儀を強調している。「ぞ」は強意の係助詞で、結句の連体形「つる」で結ぶ係り結びとなっている。本巻の第千百六十六首にも「たどるたどる」が詠まれている。
結句「山は越えつる」は、山は越えてきたことだ、の意で、四句の「ぞ」を受けて結んでいる。
もちづきのこま:信濃国望月の牧から献上された馬
たどる:道を探りながら進む
おほせごと:天皇の仰せ
- 作者
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素性法師
- 出典
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後撰和歌集
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やれば惜しやらねば人に見えぬべし 泣く泣くもなほ返すまされり
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万代を契りし事のいたづらに 人笑へにもなりぬべきかな