水無月の土さへ裂けて照る日にも
我が袖干めや妹に逢はずして
- 歌の意味
-
六月の、土さえ裂けるほどに照りつける日差しにも、私の涙に濡れた袖は乾くだろうか。いや、乾きはしない。恋しいあの子に逢わないままでは。
- 鑑賞
-
巻第十三 恋歌三 825
詞書は前の歌に続き「題しらず」
土さえ裂けるほどの真夏の日差しにも、恋しい人に逢わないままでは涙に濡れた袖は乾かないと詠む歌である。炎暑の激しさを引き合いに、それでも乾かない袖で、尽きることのない恋の涙を強く訴えている。
万葉集巻十に類歌が収められている。
初句「水無月の」は、陰暦六月の、の意で、一年で最も暑い時季を言う。
二句「土さへ裂けて」は、土さえ裂けるほどに、の意で、「さへ」は添加を表す。
三句「照る日にも」は、照りつける日差しにも、の意である。前の第八百二十三首の夏衣に続き、真夏の景物を詠んでいる。
四句「我が袖干めや」は、私の袖は乾くだろうか、いや乾かない、の意で、「や」は反語を表す。ここで句切れとなる。
結句「妹に逢はずして」は、恋しい人に逢わないままでは、の意で、倒置して四句の理由を示している。
みなづき:水無月。陰暦六月
ふ:干。乾く
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
拾遺和歌集
- 前の歌
-
刈りて干す淀の真菰の雨降れば つかねもあへぬ恋もするかな
- 次の歌
-
鳴る神のしばし動きて空曇り 雨も降らなん君とまるべく