山城の井手の玉水手にくみて
たのみしかひもなき世なりけり
- 歌の意味
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山城の井手の清らかな水を手に汲んで飲むように、あてにしてきた甲斐もない二人の仲であったよ。
- 鑑賞
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巻第十五 恋歌五 1368
詞書は前の歌に続き「題しらず」
玉水に寄せる一連の二首目である。井手の玉水を手に汲んで飲むように頼みにしてきたのに、その甲斐もない仲であったと嘆く。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者の「読人しらず」は、名の伝わらない作者であることを示す。
井手は山城国綴喜郡の地で、現在の京都府綴喜郡井手町にあたる。玉川が流れ、山吹と蛙の名所として詠まれてきた。
この歌は『伊勢物語』第百二十二段に見える。そこでは、男が約束を違えた相手に贈った歌とされる。
初句「山城の」で、歌枕の国が示される。
二句「井手の玉水」は、前歌の「玉水」を受ける。前歌では一般の清水であったものが、ここでは井手という歌枕の水として示される。
三句「手にくみて」は、手に汲んで、の意である。前歌の「手にむすびても」と同じく、手で水をすくう動作である。三句までが「たのみ」を導く。
四句「たのみしかひも」の「たのみ」は、手で汲んだ水を「飲み」の意と、相手を「頼み」の意を掛ける掛詞である。前歌の結句「頼まじ」と同じ「頼む」の語で、前歌では試してから頼むまいとしたのに対し、この歌では頼んだ甲斐もなかったと結果を嘆いている。
結句「なき世なりけり」の「世」は男女の仲の意である。気づきの「けり」で、甲斐のない仲であったと思い知ったことを詠嘆する。
たのむ:手に汲んだ水を「飲む」意と、相手を「頼む」意を掛ける
かひ:甲斐、ききめ
よ:男女の仲
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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玉水を手にむすびても試みん ぬるくは石のなかも頼まじ
- 次の歌
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君があたり見つつを居らん生駒山 雲な隠しそ雨は降るとも