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言ひさしてとどめらるなる池水の
波いづかたに思ひ寄るらん

歌の意味
言いかけたまま止められてしまったという、せき止められた池の水の波のように、あなたの心はどちらへ寄っていくのだろう。
鑑賞
巻第十四 恋歌六 1016

詞書「言ひ交はしける男の親、いといたう制すと聞きて、女の言ひつかはしける」
 言いかけたところで止められたという池の水の波は、どちらへ寄っていくのだろう、と詠んだ歌である。親に止められた男の心を、せき止められた池の水の波にたとえ、親の言いつけに従うのか、自分に心を寄せるのかと問いかけている。
 詞書によれば、言い交わしていた男の親がひどく反対していると聞いて、女が言い送った歌である。本巻の第千十三首のしがらみと同じく、流れをとどめるものに寄せて恋の妨げを詠んでいる。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「言ひさして」は、言いかけて途中でやめて、の意で、二人の約束が途中で止められたことをいう。
 二句「とどめらるなる」は、止められているという、の意で、「らる」は受け身、「なる」は伝聞の助動詞である。詞書の親の制止を受けている。
 三句「池水の」は、池の水の、の意で、せき止められた水に男の心をたとえている。
 四句「波いづかたに」は、波はどちらの方へ、の意である。
 結句「思ひ寄るらん」は、心を寄せるのだろう、の意で、「寄る」は四句の「波」の縁語となっている。「らん」は現在推量の助動詞である。

いひさす:言いかけて途中でやめる
せいす:制止する、禁じる
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
しるしなきおもひとぞ聞く富士の嶺も かごとばかりの煙なるらん
次の歌
知られじなわが人知れぬ心もて 君をおもひの中に燃ゆとは