知られじなわが人知れぬ心もて
君をおもひの中に燃ゆとは
- 歌の意味
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あなたに知られることはないだろうよ。人知れぬ私の心のままに、あなたを思うその思いの火の中で燃えているとは。
- 鑑賞
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巻第十四 恋歌六 1017
詞書「同じ所に侍りける人の、思ふ心侍りけれど言はで忍びけるを、いかなる折にかありけん、あたりに書きて落としける」
人知れぬ心で、あなたを思う思いの火の中に燃えているとは、あなたに知られることはないだろう、と詠んだ歌である。打ち明けられない恋を、誰にも知られずに燃える火にたとえ、その苦しさを訴えている。
詞書によれば、同じ所に仕えていた人が、思いを寄せながらも口に出さずにこらえていたが、どういう折であったのか、相手のそばに書いて落としておいた歌である。本巻の第千十四首の富士の煙に続き、思いの火に燃える恋を詠んでいる。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「知られじな」は、知られることはないだろうな、の意で、「じ」は打消しの推量、「な」は詠嘆の終助詞である。ここで句切れとなり、四句と結句の内容を先に打ち消す倒置となっている。
二句「わが人知れぬ」は、人に知られない私の、の意である。
三句「心もて」は、心をもって、の意で、「もて」は「もちて」のつまった形である。
四句「君をおもひの」は、あなたを思う思いの火の、の意で、「おもひ」の「ひ」に「火」を掛けている。本巻の第千十四首の四句「おもひに燃ゆる」と同じ掛詞である。
結句「中に燃ゆとは」は、その中で燃えているとは、の意で、「燃ゆ」は四句の「火」の縁語となっている。初句へ返る倒置で結んでいる。
おもひ:「思ひ」の「ひ」に「火」を掛ける
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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言ひさしてとどめらるなる池水の 波いづかたに思ひ寄るらん
- 次の歌
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あふはかりなくてのみふるわが恋を 人目にかくることのわびしさ