篝火にあらぬわが身のなぞもかく
涙の川に浮きて燃ゆらむ
- 歌の意味
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篝火でもない私の身が、どうしてこのように、涙の川に浮かびながら恋の火に燃えているのだろうか。
- 鑑賞
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巻第十一 恋歌一 529
詞書「題しらず」
鵜飼の舟の篝火が川に浮かびながら燃えているように、篝火でもない自分が涙の川に浮かびながら恋の思いに燃えているのはなぜかと問う歌である。水と火という相反するものを同時に抱える恋の矛盾を、川面の篝火の景に託している。次歌の第五百三十首も篝火を詠み、二首で対をなしている。
初句「篝火に」は、夜の川で鵜飼などの舟にともす篝火のことである。次歌の第五百三十首も同じ篝火で始まり、二首で対をなしている。
二句「あらぬわが身の」は、篝火ではない私の身がの意である。
三句「なぞもかく」は、どうしてこのようにの意で、結句の「らむ」と呼応して疑問を表す。
四句「涙の川に」は、涙が流れて川となったものの意で、本巻の第五百十一首、第五百二十七首の「涙川」とともに、涙を川にたとえている。
結句「浮きて燃ゆらむ」は、浮かびながら燃えているのだろうかの意で、「らむ」は現在の事柄の原因を推量する助動詞である。「燃ゆ」は恋の思いに燃えることで、涙の水と恋の火の矛盾が表されている。
かがりび:夜に照明として焚く火。鵜飼の舟などにともす
なぞ:どうして
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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恋すればわが身は影となりにけり さりとて人に添はぬものゆゑ
- 次の歌
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篝火の影となる身のわびしきは 流れて下に燃ゆるなりけり