逢ひ見ての後の心にくらぶれば
昔はものも思はざりけり
- 歌の意味
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あなたと逢って契りを結んだ後の、この恋しく思う心に比べれば、逢う前の昔は、物思いなどしていなかったも同然だった。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 710
詞書「題しらず」
逢って契りを結んだ後の心に比べれば、逢う前の物思いなど、物思いのうちにも入らなかったと詠む歌である。思いが遂げられれば心は満たされると思っていたのに、逢った後のほうがかえって恋しさが募るという、恋の逆説を率直に表している。百人一首に採られた名高い歌で、百人一首では四句を「昔はものを」とする。ここから第七百十六首まで、逢った後もかえって恋しさが募ると詠む歌が続く。
作者の「権中納言敦忠」は藤原敦忠である。左大臣藤原時平の子で、従三位権中納言に至った。琵琶の名手として知られ、三十六歌仙に数えられる。
初句「逢ひ見ての」は、逢って契りを結んでからの、の意で、「逢ひ見る」は男女が契りを結ぶことをいう。次歌の第七百十一首の初句「逢ひ見ては」、本巻の第七百十二首と第七百十六首の初句「逢ひ見ても」と、同じ語で始まる歌が続いている。
二句「後の心に」は、後の心に、の意で、前歌の第七百九首の四句「覚めての後に」と、「後」の語を共有している。
三句「くらぶれば」は、比べると、の意で、「ば」は已然形について、〜すると、の意を表す。
四句「昔はものも」は、逢う前の昔は物思いも、の意である。百人一首では「昔はものを」とする。
結句「思はざりけり」は、しなかったのだ、の意で、「けり」は気づきの詠嘆を表す。
あひみる:逢ひ見る。男女が逢って契りを結ぶ
- 作者
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藤原敦忠
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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夢よ夢恋しき人に逢ひ見すな 覚めての後にわびしかりけり
- 次の歌
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逢ひ見ては慰むやとぞ思ひしを 名残しもこそ恋しかりけれ