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逢ひ見ては慰むやとぞ思ひしを
名残しもこそ恋しかりけれ

歌の意味
逢って契りを結べば心が慰むかと思っていたのに、その名残こそがかえって恋しいことだ。
鑑賞
巻第十二 恋歌二 711

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 逢えば心が慰むかと思っていたのに、逢った後の名残こそがかえって恋しいと詠む歌である。前歌の第七百十首と同じく、逢った後にこそ恋しさが募るという心を、名残という語に託して表している。
 作者の坂上是則は、坂上田村麻呂の子孫とされ、加賀介などを務めた。三十六歌仙に数えられ、百人一首の「朝ぼらけ有明の月と見るまでに」の歌で知られる。

 初句「逢ひ見ては」は、逢って契りを結んだならば、の意で、前歌の第七百十首の初句「逢ひ見ての」と同じ語で始まっている。
 二句「慰むやとぞ」は、心が慰むかと、の意で、係助詞「ぞ」は三句の「し」で結ぶ係り結びである。
 三句「思ひしを」は、思っていたのに、の意で、「し」は過去の助動詞「き」の連体形、「を」は逆接を表す。
 四句「名残しもこそ」は、名残こそが、の意で、「し」「も」は強めの助詞、係助詞「こそ」は結句の已然形「けれ」で結ぶ係り結びである。
 結句「恋しかりけれ」は、恋しいことだ、の意である。

なごり:名残。物事が過ぎ去った後に残る気配や余情
作者
坂上是則
出典
拾遺和歌集
前の歌
逢ひ見ての後の心にくらぶれば 昔はものも思はざりけり
次の歌
逢ひ見てもありにしものをいつの間に ならひて人の恋しかるらん